"心奪われる瞬間" が人生の中にはいくつもある
そんな特別な瞬間をくれたLenaのデザインを
これからの未来へと伝え続けていきたい

2008年、当時26歳だった私が一瞬で心を奪われた、当時日本でまだ未発表だったブランド「pink india」。デザインもビジネスも未経験だった私が「pink india JAPAN」というブランドをここまで続けてくることができたのは、pink indiaというブランドに宿ったスウェーデン人デザイナー・Lenaという人の生き方が、私の人生感を変えてくれたからだと思っています。

「自分が大切だと思うことに正直に生きる」
そんな自分らしく生きる道を教えてくれたのはLENA、そしてpink indiaに関わる全ての人たちでした。”物”に宿る”人”の想いやその物語を知った時、自分の人生がこんなにも色鮮やかに彩られるのだということを初めて知った私は、そんなLenaのデザインを日本の人たちに伝え続けていきたい!と強く思ったのです。

これは、そんなまるで恋に落ちたような経験をした私と、Lenaと、pink indiaの物語です。

Contents

"pink india" そしてLenaとの出会い

pink indiaとの出会いは、2008年、当時私が大学卒業後にインターンで渡印したことをきっかけに始めたインドの商品などを集めた雑貨屋さんをしていたことのこと。インドの知人のバイヤーが送ってきてくれた品物の中に、ひときわ目を引く、およそインドの商品とは思えないポーチが紛れ込んでいたことに始まります。


見た瞬間、


「可愛いなぁ♪何だこれは!?」


そう思ったことを今でも強く覚えています。思い返せば、これが私がpink indiaに初めて恋に落ちた瞬間でした。

そのポーチが届いてからというもの、どうしてもそれが忘れられずそのポーチについて色々とインターネットで調べる日が続き、まだそれがまだ世界でもほとんど知られていない新しいブランドであること、そして日本でもまだ販売がされていないことを知りました。


「この素敵なブランドを日本で販売したい!」


そう思ってはいたものの、当時「インドと関わる仕事をしたい。どうせなら、オーナーになりたい」といった安易な考えで雑貨屋を始めたばかりの言ってみたら業界未経験の素人経営者だった私には、海外ブランドのデザイナーに突然コンタクトをとるなんて、到底そんな勇気はなかったのです。


でも、私のモヤモヤはもはや止まりません。
「どうしたら、日本に紹介できるだろう。」
「大手の商社とかがいつか販売してくれないだろうか。」
そんな淡い期待をしながら過ぎていく日々。


そしてそれから3カ月後、ついに意を決してデザイナーのLENAにメールを送ることにしたのです。


「これはチャンスなんだ」


 
当時の私は自分に言い聞かせました。とにかく、自分のあらん限り、商品の素晴らしさとブランドコンセプトに対する真摯な気持ちを書き綴り、思いをぶつけました。日本では誰にも負けないくらいpink indiaが好きだ!!長々と書き連ねました。


今思えば、あれは一種の熱烈なラブレターだったのかもしれません。


「あなたのデザインはなんて素敵なんだ」「ブランドへの思いも共感できます」とか、「どうしてもあなた(の作ったpink india)が欲しい!」なんて伝えたわけですから。

そして、メールを送ったなんとその翌日、Lenaから返事が届いたのです。

興奮して心が躍りました。
そこには、たくさんの感謝の言葉と自身のブランド設立までの想いが書かれてあり、またその優しい文面から、彼女の人となりも垣間見ることができました。


それから、私たちは何度かメールで意見を交わし、
お互いのビジョンが正しい方向に進んでいるのを感じました。そして自然な流れの中、2008年の12月、pink indiaの日本での販売の準備を始めることになったのです。


こうして私とpink indiaの歯車が動き出しました。

私とLenaとpink india

pink indiaは、スウェーデン人デザイナーのLenaがインドに恋に落ち、2004年にインドで設立したブランド。当時はインドの小さな工房でシルクスクリーン技法を用い、一つ一つ丁寧に手作業で染められた布を使用して製作されていました。


Lenaは
一人一人の職人と真摯に向き合い、大量生産では実現できない限りある自然や私たち人間にやさしいモノづくりを目指す本当に心から暖かく、そして愛情深い人でした。写真は2014年にLenaと私がインドの工房を訪ねた時のもの。この時も慈しむようにその作業を見つめ、みんなで一緒に食事を取り、pink indiaの向かうべき未来について一日中語り合ったことを今でも昨日のように覚えています。

pink indiaのブランドの代理店を始めた当初の私は、デザインも経営も全くの素人で毎日が勉強の日々。せっかく商品を輸入できることになっても、取引先の見つけ方や値段のつけ方すら最初はまるでわかりませんでした。


とりあえず営業をかけてみるものの良い反応もありません。自分のお店に並べてみても、お客様からの反応は予想とはかけ離れたものでした。
どんなに自分がこの商品は素晴らしいと思っても、「自分だけが売っている特別なブランド」は、「誰も知らないただのノーブランド」だったわけです。


ビジネスの知識もなく、
当たり前のマナーすらも知らなかった私は、本当にたくさんの人たちに迷惑をかけ来たとお思います。自分は「経営者」には向いてないのかなと当時は何度も何度も頭を悩ませるほどでした。

それでもそんな私に対してデザイナーのLenaは、自由の翼を与えて、優しく見守り続けてくれました。

素人の私が日本の女性が使いやすいバッグやポーチのアイデアを彼女に伝えても、「ダイチが言うのなら、作ってみましょう!貴方の方が私よりもずっと日本人の好みを勉強して知っているでしょうから」と、嫌がることもなくサンプルを作ってくれ、そのサンプルを基に日本オリジナルの商品が生まれたりしてきました。

今思えばブランドデザイナーに対して、一取引先が新しい商品アイディアを提案するということは、へたをするとパートナーシップが崩れ去ってしまうリスクのある大胆な試みであったと思います。自分がアイディア(感覚的、物理的派生)したものを誰かに変えられたり、自分の意図したものと違うものにされてしまったら、人によっては少し不満を感じたり、時には怒り出したりするかもしれません。デザイナーだったら尚更そうであっても不思議ではないと個人的には思います。 

にも関わらずいつも彼女は私が何か新しいことに挑戦したいと言う時には、何も言わず、寧ろ
「私のデザインをDAICHIは、次にどんなものにするのかしら」
とそれを楽しんでいるような気さえしました。それくらい、本当に心の広い女性だったのです。

“スウェーデン人だから”というステレオタイプではなく、それが “彼女自身の生き方” であるように感じました。
「自分は自分=自分が大切だと思うことに正直に生きる」
pink indiaの魅力とは、デザインそのものだけではなくて、そんな彼女の人間性がもたらしているのであると、彼女と仕事をしていく中で何度も何度も感じるのです。

「こんな素敵な人がデザインしたブランドに携われて、自分は本当に幸運で幸せだ」


私は彼女との仕事を通じて、何度もこう思ったのです。
心惹かれる「モノ」との出会いは、その向こう側にいる素晴らしい「人」との出会いでもあったわけです。

私たちが使う「モノ」に込められた
「人」の想いやそのストーリーを伝えたい

私がpink indiaに出会ってから心惹かれ続けているのは、デザインだけではなく、そのデザインを生み出しているデザイナー・Lenaや、これまでpink indiaに携わってきてくださった方々という人の生き方そのものの魅力を感じているからであるように思います。「モノ」にはその作り手である「人」がいること。そしてその人の想いに触れた時、それはただの「モノ」を超えて自分の人生を色鮮やかに彩ってくれる。これが私を突き動かし続けている原体験なのです。

pink indiaとの出会いからから10年。業界未経験だった私をたくさんの方が支えてくださり、pink indiaは少しずつ成長し、お取り扱いしていただけるお店も少しずつ全国へと広がっていきました。

途中インドの工房移転に伴う本体のpink indiaのアクセサリー部門のクローズにより、Lenaがメインに扱っていたアパレル部門の生産拠点と別れ、バッグやポーチなど日本で販売されている全ての商品の生産拠点を日本へと移すことになるなど思いもかけぬピンチの場面もありました。この時には今のpink indiaを支える新たな国内の職人さんとの出会いが私を助けてくれました。現在pink india JAPANで取り扱っている商品は、全て国内の職人さんたちにより一点一点丁寧に製作していただいているものです。

少しずつその形や生産体制は変わっていますが、私が伝えたい想いはずっと変わっていません。

「どんな人が」
「どんなところで」
「どういう想いで」


pink indiaという作品を作ってくれているのか。
このひとつひとつの「モノ」に込められた「人」の想いやストーリーを伝えていきたいのです。

私が心奪われた、特別な出会いをもたらしてくれたこのLenaのデザインを通して、
みなさまの人生にも色鮮やかな彩りを添えることができたら。
そう願って、今日もまたpink indiaの作品をみなさまにお届けしています。

まだまだpink indiaのチャレンジは続きます。
ぜひこれからも、pink indiaでしか味わえない、
北欧スウェーデンとインド、そして日本の三位一体の創造力をぜひお楽しみください。

2020年5月
pink india JAPAN 代表 河島大地